10 2016

東京の中の他界




写真は上野公園裏手の車道に面した階段。
何年か前、東京巡礼のフィナーレはここで踊った。
ここで以前はよく稽古もした。
上野のオモテ通りとは違って、車が通っているくせに妙に静かなんだ。
カラスがよく鳴いているし、野良猫が多い。
通りをはさんで向かい側は、上野動物園の裏手になる。
上野のオモテ通りから歩いて、この通りにさしかかると、突然空気が変わるんだ。
急にしんとして、空気が重く沈んでいる。
かすかにケモノ臭い。

ここは上野動物園の裏手でもあり、きいたところによると、
ここらへんのどこかで動物園の動物達が死んでいくらしい。
実際はどうなのか知らない。
動物園の動物は、どのにようにどんな場所で死ぬのか私は知らない。

ただこの通りには異界の空気があるんだ。
オモテにはかならずウラがあるんだよね。
世界各地から連れて来られた動物達の魂はどこに行くんだろうね。
どんな思いで死んでいくのだろうね。
遠いアフリカの風景を瞼に焼き付けているのだろうか。

この通りには時折、夜などに、
死んでいく動物達の声が聴こえるそうだ。
ほんとかどうかは知らない。
ウソでもホントでも、ここは東京のなかの他界だ。

ただこの場所が私は好きなので、よく稽古した。
いつも鳥の声がするし、あまり人が来ないし、
街なかなのに気兼ねなく踊れるんだよ。

私はこの写真を見るたびに何かを感じる。

舞踏家って、どんなに幸せな安らぎのなかにある時にも、
つねに極限状況を体の中に宿しているものだ。
地獄を忘れることはないんだ。
自分が今いくら幸せでも。

それは呪いのような生だけど、
とてつもない至福でもあるんだ。
お金にもならない、人から評価されることもない、
平和な日本にあって、何十年も孤独を背負って生きていく、
そんな人間が、
死者たちを体に宿している。

舞踏ってそういうものなんだよ。

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