16 2017

モノの解体 2



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スローという稽古について、しつこく書きます ^^;

私のしている稽古の大半は、身体運用の稽古を別とすれば、
「身体の内部を引き出す」ための仕掛けだ。
(そして引き出された内部をいかに形にしていくか)
内部とは、まだ事物や人間や、自然すらもが、形になる前のある状態であり、
エネルギーの沸騰状態みたいなものかなと思う。
「無」の領域ともいえるのかもしれない。
哲学が長いあいだ内在野とか内包量とか呼んできたものだ。
形がないものだから、それをどんなものと、あらかじめ提示することはできない。
外に引き出して具体的になった時(人間の動きになった時)、
はじめて何か見えるものになる。

ありきたりの動作を、ただゆっくりおこなうだけで、
内部が発現し、最終的には聖性にまで至る、という単純で驚くべき稽古であると思う。
(スローの稽古自体は演劇の稽古などでもおこなわれているが、程度と意味付けが少し違う)
ただ偉そうに哲学の言葉を振り回すのでなく、
それをやってみればとても気持がよく、満たされる、ということが肝心だ。
誰にでもできるし、積み重ねていけばエクスタシーだし、ダイレクトに異界に参入できる。
ただし、うまく行く時もあれば行かない時もある。
いつもおいしい思いをしたい人には向かない稽古ではある。
ドラッグも儀式的手続きも踏まずに、 素で勝負するのだから、簡単ではない。

先日この稽古を私もしてみた。
いつもは生徒さんがするのを私は見ているだけ。
生徒さんの動きや意識状態をチェックするために、ふだんは私は稽古に参加しない。
でも11月に公演を控えていることでもあり、私自身も稽古の必要を感じたので、
数年ぶりにスローを生徒さんと一緒にやってみた。

それは私にとって、いまだかつてなかった深い体験になった。
一種の脱魂状態になり、言葉では言えない、「行っちゃう」感覚だった。
ただふつう言う脱魂と違うのは、自己意識は明白にあることで、
あとで思い出せないとか、自分をコントロールできないとか、そういうことはない。
そこがイタコとか古来の儀礼的トランス状態と違う。
このことは現代人として重要な気がしている。

写真では伝わらないとは思うけど掲載してみた。
お茶碗に入れた水を10分〜15分かけて飲む、というスローの稽古。
この時、お茶碗も私自身も、溶解して形をなくした。
手に持つものはもはやお茶碗ではなく、何とは言えないものになり、
自分は自分でなくなり、
世界は星雲のようにうねり、揺らめいて、
まるでフィルムを巻き戻すように、始原?らしき世界に吸い込まれていった。
それでも意識は明白にあり、自分が何をなすべきかはわかる。
10分で茶碗を元に戻そうと思っているし、ちゃんとそれができる。
その明白な意識とトランスとの間に浮かんでいることが、たまらなく気持がいい。
理屈抜きに「これだ」と感じる。これこれ、これなんだよ、と。

この体験は言葉にすると、
事物の分子化であり「器官なき身体」であり、
時間と空間がいまだ分化していないところから、差異によって時間と空間が生成する過程なのだと思う。
スローで動くとは、一瞬一瞬を刻むことによって、差異を明確に成立させることだ。
時間とは差異であり、時間の生成は空間を生む。

私はドゥルースやアルトーを読むと、これは全く舞踏のことだと感じてきた。
おもわず笑いが出るほど、舞踏とみごとに合致してしまう。
分子化された世界、それは原初世界のことかと思う。
分子化が緻密であればあるほどエクスタシーは深まり、他界に接近していく。

スローでトランスになりながら、意識的に一定の動きをしていくとき、
世界を原初に巻き戻そうとする力と(フィルムを巻き戻すように)、
世界を(風呂敷を開くように)ひらいて展開しようとする力が、
拮抗的に働き、人間はその両者のせめぎ合いの中で溶けて、宙吊り状態なり、
めまいしながら見えない世界に吸い込まれていく。
このせめぎ合いの感覚がたまらない。酔い痴れる。


 ・・・こんなことをやっていると表現からますます遠ざかる(笑)
それは哲学であって芸能じゃない、という声も聞こえそうだ。
私はこれは芸能のベースであると思っている。
原初からあまりにも遠ざかってしまった現代人は、
これくらい手間をかけないと芸能の力に至れないのだと。
それが私のポジションなのだから仕方ない。
誰も歩かない道をひとり歩いてきた誇りがある。
身体以外の何ものも前提とせず、見えない道を嗅ぎ当てていく野生の道。
誰も私が歩きながら見てきた、同じ景色を見ることはない。
なんと言われようと、獲得されたこのベースを私は手放すことはできない。

   
  これを芸能につなげていく茨の道が待っている。

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